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プロペラから激しい轟音が唸る。一瞬がたんと機体が不安定に揺れたかと思うと、地を離れ高々と宙に浮いていた。心臓がばくんばくんと高鳴った。ぺリポートがどんどんと小さくなっていったかと思うと、街が見え、ミッドガルが一望出来るまでになった。雲がすぐ隣を泳いでいる。気圧が急に下がったせいか、耳の中に空気が詰まったような変な感覚が襲う。普段なれない感覚が気持ち悪い、耳に指を突っ込むが一向に治らない。頭を軽く叩いても揺すっても結果は変わらなかった。

「ヘリコプター初めてのようですね、唾を飲むといいですよ」

隣に座っていた操縦士がそう呟くように言った。ヘルメットで表情は伺えないが、淡々とした言葉の中にある気遣い。嬉しく思いながら教えられたことを実践してみると、まるで嘘のようにあっさりと耳の中にあった違和感が消え去っていった。ありがとうございます、と頭をお辞儀した。
後方にいるルード先輩とレノ先輩は、それぞれ窓の外を眺めて黄昏ていたりノートパソコンをいじっていた。
することもなく、わたしもただただ外を見やる。ミッドガルの姿はもう視界には映らず、連なる山々だけが眼下に広がっていた。
鬱蒼とした緑色。魔晄エネルギーを神羅が吸い上げているせいで星が滅ぶとアバランチは言っているが、今のところその“滅ぶ”兆しなど一行に現れてないように感じる。何を根拠にしてそのようなことを述べているのだろうか。
どちらにせよ、アバランチとの抗争で、双方沢山の血が流れていることだけは確かだ。人がゴミのように犠牲になって消えていく。
ある意味宗教戦争のように思う。神羅とアバランチという宗教。どちらが正しいか正しくないか、善か悪か、を決定付けるために争う。争っているそのときは、自分達が正しい善だと互いに思っているはずだ。行いが悪とわかっていながら戦い続けることなどまずしないだろう。善だったか悪だったかの結果は、全てが終わったあとに歴史を振り返る人々によって決められる。そして時を経るにつれてその歴史は受け継がれるか風と共に去っていくかの末路を歩む。
ぴぴぴ、とヘリコプター内に機械音が鳴り響いた。操縦士が手馴れた手付きでボタンを押す、機械音と入れ違いにバーチャル画面が自分の席の目の前に現れた。
先ほど会ったばかりの主任の姿がノイズ交じりに映った。これから詳しい任務内容が話されるのだ。脈は少し速く打ち、体が熱かった。座席の横に掛かっているヘッドフォンを取り耳に当てた。先輩達も同じようにそれをした。話が始まる。
主任の言葉が両耳から液体のようにするすると体内に入り込みわたしの体の中の熱を掻き乱して抜けていくような感じだった。意識がだんだんとぼぉっとしてくるようだ。
駄目だ、精神面が、わたしはめっぽう、弱い。
あと二十分もしないうちに目的地に着くだろう、という主任の最後の言葉だけがわたしの中で残っていた気がした。
緊張、不安、恐れ、期待、無気力、色々なものがミックスジュースになって血管を流れている。