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昨日は仕事が休みだった。家でだらだらとテレビをつけながら過ごし二十時には寝た。前夜何も食べずに寝たので早朝腹が減ってぐだぐだと起きた。冷蔵庫を見たらチーズとパン二切れに賞味期限切れのハムしか入っていなくて、そういえば俺は日頃家に居るわけではないし特に料理をするような奴でもなかったと今更ながらに気づいたのだった。取りあえずシャワーを浴びてパンとチーズを齧り、念入りに髪をセットして会社に行くことにした。
欠伸まじりの伸びをしながらビルに入ると、おはようございます、と受付嬢が元気よく挨拶していたので適当に手を上げジェスチャーで挨拶をする。まったくこんな朝っぱらからご苦労なもんだとつくづく思う。機械のように同じ事を今日一日で何千回、下手すれば何億回も言うのだろう。
エントランスのエレベーターでタークス専用のフロアに行こうと思ったら、前方にスーツ姿の厳ついはげ頭がすでにエスカレーターの扉の前で仁王立ちをして待っていた。しきりに降りてくるエレベーターの電子表示を見ている。二十四階、十五階、どんどん表示が変わる。

「よぅ、ルードおはよう」

「今日はいつもより二時間十分も早いな、おはよう」

「・・・あぁ、家に食べ物が無かったんだぞ、と」

ルードは鼻でふんと笑った、まったくお前らしいな。
ちぃん、と音が鳴って鉄の扉が開く。カツカツと革靴の踵が大理石の床とぶつかる。ルードが“閉”のボタンと行き先を押した瞬間、箱は俺らを乗せて動き出した。蛍光灯がぼんやりと霞んだように濁った光を放っていた。
今日のスケジュールでは俺は八時半から出勤開始になっている。余裕過ぎるほど早く来てしまった。何して時間を潰していようか、今の最優先に考えなくてはならない課題。取りあえず家に帰るときには、ミッドガルのスーパーマーケットに寄って食べ物を買おうと思った。意外と家庭的なことを考えることもあるんだな。
今日は朝から晴天だそうだ。雲ひとつ無く美しい青空が広がるでしょう、そうお天気お姉さんが言っていた。
今日はきっとミッドガル八番街に諜報活動か何かだろう。諜報活動ほど面倒なものは無い。そういえば書類の仕事をやっていなかったな、あれ、何処に書類を置いていたっけ。机に置きっぱなしにしているのだろうか。
頭の中がぐちゃぐちゃとしてきて何だか嫌な気分になった。朝はやっぱり清々しくいたい。
エレベーターが止まった。扉が開く。
会議室や統括室はエレベーターを降りて廊下を右に進む、休息室や仮眠室は左。ルードは右に向かって歩いてゆく。あいつはいつもこんなに早い時間から来ているのか、凄い。ちょっと尊敬。そして睡魔。

「ごめん、俺頭すっきりさせる為に少し仮眠室で寝てくるぞ、と」

手をひらひらと振り、右から左に方向転換した。