時間は大分経っただろう。
フロアを全て見終えた、隅々までよく探した。俺が見落としたなんてことはまずないのだから、担当の場所には何もなかったということになる。定期的な連絡が時報の様に続く、異常がない、そればかりだ。俺が調べ終えたということは、今頃ルードも調べ終えたに違いない。
古びた洋館にやけに新しい監視カメラ、しかしながら人が訪れて活動しているようには見えない床の埃の溜まり様。おかしい、おかしすぎる。調べているときから、薄々、そして確信にだんだんと強くなって思う、この屋敷は罠若しくは囮。情報があるのだから人の出入りがこの屋敷付近であることは多分絶対だ。だが不可解な点もある、仮にここに出入りしているのがアバランチだとすればあまりに今までと警備が手薄だ。今までに経験した限りでは、彼らはどんな秘密裏な隠れ家でも入り口付近には見張りをつけていた。外出中と考えても留守を守るものを置いておくはずだ。上空でのツォンさんからの言葉では、何十人かの武装集団が出入りしている様子があったということを情報として聞いていた。この不可解な感じが何か引っかかる。半分アバランチのようで半分違うような感じ。
とりあえず何かを見つけ出してくる可能性が一番高いのは屋敷外を調べているだ。ルードからの担当場所の確認終了の報告を受け次第、彼女のほうに回ったほうがよいだろう。塔を調べていると言っていたが、大丈夫だろうか。
最初にルードと落ち合った部屋まで来て、床にしゃがみこんだ。部屋の窓から差し込む光で埃がてらてらと舞う姿がよく見える。一服ぐらい吸いたいところだが、流石に館内じゃ引火したら危ないからやめておいた。代わりに先ほど彼女に貸した水筒の残りの水を口に含んだ。
「やっぱりアルコールほうが嬉しかったよなぁ、と」
彼女が目を洗う姿を思い出した。そしてパソコン上の文字が浮かぶ。
拒絶するマスク、安定剤をこっそりと飲んでいたこと、あぁ何も起こらなければいいけれども。
「まったく持って扱いづらそうな奴ばかり、タークスにはやってきますなぁ」
口角があがる。赤い髪を掻き揚げ、宙を仰ぐ。
仲間からの連絡を待つのみあった。