勢いよく扉から飛び出した。さやえんどうが弾けたみたいに三人ともバラバラに。
きっと何かが隠されているに違いない、この屋敷には。レノ先輩が三階を、ルード先輩が二階を、わたしは離れの塔を調べる。細かく無線で連絡をとり合うと約束した。
担当の離れの塔は屋敷の東に位置していて、距離は一キロ無いぐらいだと思われる。庭から行けるそこへの道は途中からは芝生で無く雑草がやんやと蔓延っていた。本当にあの大きな柵に囲われた中なのか、と疑うほどにそこには木が生い茂り山と変わりがない気がした。塔はラプンツェルの塔を思わすほどその見た目、拒絶するように古い鼠色の石畳積み上げられたそこは、もしかしたらあの屋敷より古いのではないかと思うまでだった。
「こちら、離れの塔の前まできました」
『辺りの様子はどうだ?』
「辺りは木々に囲まれ、雑草が茂っています。石畳も家の綺麗なレンガと違って大分汚いです」
『中に入れそうか、と?』
「はい、一応鍵付きのドアが入り口にありますが錆びていて壊れています、なんとかなりそうです」
『了解』
無線を切った。
扉にある鍵は部屋などに付いているような綺麗なものではなく、何かを閉じ込めるような大きな大きな南京錠であった。しかしそれはだいぶ時間がたった物であるようで、濁った黄色と赤茶の汚れが酷く目立ったものだった。
「汚い……」
そうは言いながらも中に入らないことには仕方が無く、スーツの裏地にある道具セット(――――ブラック・ジャックのコートの中にメスが沢山はいっていたりとかのあんな感じで)から細長いピンを取り出しで鍵穴を弄れば、鈍い音と共に開閉が可能となった。手が錆臭くなってしまい嫌な顔をしながらも、辺りを周到に見回してからその塔の中に足を踏み入れた。
歩けば石畳と靴がぶつかる音が狭い階段の空間いっぱいに反響してぶつかる音がした。どうやら螺旋階段になっているようで、上り下りのスペースは人が一人通れるか通れないかのぎりぎりなものであった。登り手右にはスロープがついていて、そこから果てしないくらいに見えない天井の暗黒へと繋がっていた。
勘が当たれば、多分ここは誰かを幽閉するのに使われていた場所に違いない、それが現在のアバランチの疑いのある者達でもそれ依然に住んでいた人でも。
上に足を進めて行っても、今のところ人がいそうな気配は無い。いたとしたら侵入したその時点で狙撃されていただろう。
塔内には電気などが無いようで、ところどころ数メートルおきに空けられた窓から光を取り入れているようだ。しかしそうであっても暗いことに相違ない。足元が見える程度だ。夜は何か灯りを持っていかないと確実にそこは見えないだろう。
冷たい音だけが一定のリズムで刻まれながら、長い長いそれを進んでいった。