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必要に睨むそのその視線を俺は背後から感じ取った。殺気、とまではいかないが、明らかに良いものではない視線だ。誰がこれを送っているかはわかっている。
 
そいつによるものだ。警戒心の強い女だとつくづくこの任務で組んでから思う。基本的に周りを警戒しているのだが、俺に対しての警戒は一層強いものだと話していたりしていて感じる。俺の本質を見抜いているのであろうかそうでないのであろうか。自分が俺の興味の対象になっていることぐらいはわかっているのは確実なんだと思う。
指定されたその部屋の扉を開けると、相棒が待っていた。

「よぉ、無事か?」

「まぁな」

最後に入ってきたが扉を閉めたのを確認してからルードはぽつぽつと話し始めた。
この屋敷は全部で三階建てであるようで、いたるところに監視カメラが設置してある。一階以外はまだ詳しくは調べていないもの、自分が館内を詮索している間人の出入りは全く感じられなかったそうだ。
多分此処は暫くは人の出入りがないものだったと思う。なぜなら床に散らばる埃のせいで出来るはずの足跡が、まったくと言っていいほど無かった。もしも此処を活動拠点としているはずならもっとそれが残っているはず。
後ろを振り返るとが俺の渡した水筒の水で目を洗っていた。
さてここからどういう作戦を組み行動していこうか。三人で固まって行動するのは効率が悪すぎるし、タッグを組むとしても新人の彼女が一人になる状況は危険だ。かといって彼女と誰かが組んで相性が良いとは限らない、足手まといになる行動があればすごく困る。一番良いのは三人別々に行動して隅々までしらべることなのだが。
眉間に皺がよる。どれが正しい正解なのだろう。選択のミスが大きな命取りになる場合がある。

「これ、ありがとうございました。先輩、わたし、行動するの一人でも大丈夫です」

少し不機嫌そうな言い草で、目を擦りながら水筒を突き出してそう言った。考えを読まれたのだろうか、ピンポイントの彼女からの言葉に一瞬目を丸くさせてしまった。
ただその言葉のお陰でどうやって行動しようか、という考えの答えがまとまった。

「そうか、それじゃあ此処からはばらばらに三人で分かれて調べる。何かあったらトランシーバーで各自で連絡をとるぞ、と」

二人は小さく頷いた。