「この時間を利用して、少しでも打ち解けませんか?、と」

ルードを完全に見届けた後、彼女へと視線を移し言った。
彼女の瞳が一瞬ビクついた。人見知りするタイプのようだ。
少しうなだれ気味の頭がかくんと一度下がり、小さな「はい」と言う声が聞こえてきた。これも、先輩命令ということになってしまうのだろうか。先輩とは便利だが少し悪い気もするな。初めからイリーナのように上下関係を気にしない稀なやつもいるが大抵は先輩には逆らず命令を聞く。後輩でも昇進した上司となったならば話は別だが、タークスという少数部隊で、しかも第一線の俺にいちゃもんをつけてくる後輩など殆どいない。(殆どに当てはまるのは先ほど述べたやつのことだが)
座っている彼女の足がカタカタと揺れていた。貧乏揺すり、というもの。
見た限りのデータでは彼女の家は裕福な方で育ちもそこそこ良い。ミッドガル出身だ。スラムでは無い。上の世界に初めから住んでいた人。両親は二人とも神羅で働いており、なかなかのポストについている。
貧乏でなくても貧乏揺すりなんてするんだな、なんて思ったり。

「趣味とかはあるのか?と」

「・・・絵を描いていたりします」

「ふ〜ん、油絵とか?」

「・・・ぐちゃぐちゃして爆発した感情を描きます・・・自分の思った通りに」

なんだかアートという言葉がぴったりな気がした。何となくイメージにあっている気はしないでもないような。ただ感情の爆発とか激しそうな感じがする。どんな絵を描いているのかといささか気にはなったけれども、見せてくれとかいう話を持ち出してそこから深い関係になるのも嫌だと思った。俺の中では基本は浅く、広く。深く馴れ合うやつは要らない。居たとしても今はルードと主任だけで十分だ。

「やっぱり先輩と、との任務は慣れないものなのか?と」

そこで申し訳無さそうにその首を動かした。正直な感想、そっちの方が嬉しかったからよいのだけど。
その後は会話が全く続かなかった。何を話そうにも実際話すことなどないし、彼女ともっと話してみたいと思いつつも切り出せない自分がいた。
彼女は依然首がうなだれていたまま。
俺はそっと手をのばしてみた。大丈夫か?と、そう、声をかけようと。