おぉぶれぇねりあなたのおうちはどこ
わたしのおうちはすいすらんどよ

日本の歌曲のようだ、スイスについての。取り敢えずスイスという言葉は聞き取れた。アルプスの少女ハイジだったかなんだかのアニメーションも見せて貰った。そう、今わたしはスイスさんに会うという目標の下、スイスさんに近しい日本にスイスについて教えて貰っている。日本にあるスイス関連の物を全てわたしに見せて頂きたい!とわたしが押し掛けたようなものなのだが。

「一応これが我が家にある有名なスイスの歌だったのですが……」

ことり、と目の前の机に煎茶が置かれた。木製で出来たそれは、アメリカの家にあるガラスで出来たテーブルなんかとはまた違い、渋い重みがあった。今回初来日なのだが、日本の家の家具は厳かというかなんというか他の諸国とは全然雰囲気が違っていて独特で驚いた。同じアジア圏でもここまで違うとは。

「ありがとう、スイスさんのこと少しでも理解したくてさ」

にへら、とスペインみたいにだらしなく笑うと日本もくすくすと笑いを返してくれた。

さんは、スイスさんが好きなのですねぇ」

「うん、だってとても可愛いじゃないですか!!この間日本が教えてくれた萌というものだと思う!」

「ああ、あなたとは気が合いそうですよ、スイスさんは本当に萌ですからねぇ」

「これでスイスさんのこと少しは理解出来ましたかね?」

「……あ―……だといいですけどねぇ」

言葉を濁し茶を啜る。それを見て真似をする。紅茶や珈琲とは違う苦味が口の中にぶわりとネットが広がるように舌を捕まえて弄ぶ。ケーキの代わりに出されている和菓子というものは少しだけ含んだだけで驚く程甘く、少し顔をしかめてしまった。

「お茶と一緒に食べると丁度良いのですよ」

助言通りにしたらなんとも美味しく食べれた。
お茶を飲みながら一緒に食べるとはさながらロシアンティーのようだと思った。あんことは日本ではジャムのような存在なのだろうか。

「おぉ、美味しいのだ」

「それはよかった」

微笑みながらわたしを見つめる姿は孫を見るお爺ちゃんのようで、なんとなく温かかった。とはいえ彼もわたしに負けないくらい童顔なので実際は少年のようだ。こうやって見ると彼もなかなか可愛い、萌かもしれない。

「日本もなかなか萌かもしれない」

「ふふっ、それはどうも。さんもなかなか萌ですよ、」

「あはは、ありがとうございます。ただわたしはメイド服を着こなせる自信がありませんよ」

障子の向こうにある縁側、その先に広がる日本庭園。多分そこからだろう、小鳥のきょるきょると鳴く囀りが静かな空間には響く。
のんびりとこんな下らない話を楽しむ。それはとても素晴らしいことだと思った、そんな日曜日。