目が覚めると顔の目の辺りの皮膚が突っ張るような感覚があり、のそのそと布団を這い出て洗面台鏡で確かめたら赤く腫れていた。それをみて初めて泣いたのだと確信した。まだ頭の中がバターみたいにとろんとしていたので再び寝室に戻るとベッドの脇に置いてある小さな机の上にメモが置いてあった。何やら鉛筆でぐりぐりとハートが描かれており、なんだこれは、と思った。全く見に覚えにない。はて、こんな物を描いたのだろうか。そしてわたしは何故泣いていたのだろうか。些か疑問に思ったが睡魔に負けて再び、寝た。
次に意識が戻った頃には空は茜色に燃え上がっていて、それは朝焼けか夕焼けかわからずにいた。もう睡魔を訪れておらず思い切りのびをした。置き時計を見やるてPM6:00の文字、ああ、夕方か。
――そう言えば今日は二十時からフランスの家でのお手製の夕食会にお呼ばれしていたんだ!
ふいに頭に過ぎる。今から身支度するとなるとぎりぎりであろう。Tシャツにジーパンの格好で寝ていたことを考えると、きっと支度の途中で二度寝でもしたのだろう。慌てて顔を洗いに行く。洗って面をあげると見事に腫れた瞼がまだあって、何度も何度も冷たい水でばしゃばしゃとそこに当てがった。完全とまでいかずともある程度まで腫れが引いたのを確認すると髪をとかし結い上げ、 ソファー近くに転がっていたカーディガンを羽織ってフランスの家へと向かった。

*

「よぉ、こんばんわ…ってお前何だよその格好?!」

「あはは…寝坊」

「パーティーだっていうのにさぁ…しかも泣いたのか?!目が腫れてるぞ、イギリスの野郎に泣かされたのか!?」

「あはは、ちゃうよ。気付いたら腫れてた」

「ったくよぉ…」

フランスの家には待ち合わせの十分前になんとかついた。既にお呼ばれしたと思われる人々がここの亭主が作った料理をせこせこ運んでいた。

「おお、遅いでぇ

「すいませ〜ん、今手伝いますから〜」

「あいあ〜い、、、ヴェ!!」

「あぁ、コラッ!!料理熱いんだから勝手につまみ食いするんじゃない!」

時々開かれるフランスの家での夕食会。美味しい手料理をふるってくれる。フランスの料理は凄く美味しくてほっぺたがとろけそうになる。
初めは独立前にアメリカに保護されていたわたしを元気付けるためにフランスが二人だけで開いてくれた小さなものだったけど、いつのまにかスペインが加わって、イタリア兄弟が加わって気付けば恒例の行事のようになっていて。
わたしはある日まで友達というものを知らなかった。わたし、それ以外の人、そ
れで全ての世界が回っていると思っていた。こんなにも鮮やかな色が散りばめられている世界なんて知らなかった。
わたしはわたしに生の息吹きを与えてくれる心臓を見つけたのです!
とくとくと鼓動が聞こえる。机の上に置いてあったメモ帳をふいに思い出した。

「何ぼぉっとしとんねん、食べるで」

「あっ、はい」

さぁご飯の時間だ。

「せーの」

「「「「「いただきます!!!!!」」」」」