珍しくアメリカさんが会議に来るのに早かった。いつもは遅刻ぎりぎりに現れるのに。その逆でイギリスさんがまだ来ていない。大体いつも私が最初に来て次がイギリスさんだ。
アメリカさんは今日は何故か隣に女の子を連れていた。顔立ちからして東洋系であろう。身長は私よりも大分小さいように伺える。アメリカさんの後ろにどことなく隠れている様子から多分私に警戒しているのであろう。
アメリカさんが自分の席の隣にその少女用の椅子を用意して座らせているが、椅子に座ったその子は椅子から足が届かないようでぶらぶらとさせている。
限りなく萌だ。少年のようなその体つきも萌だ。色気むんむんより清純そうな方がポイントが高いのだ。私もそうだがあの子も童顔だ、そこら辺もポイント高いのだ。
スイスさんがやって来た。少女を見て一瞬びっくりしている。少女はというとぽけ〜っとした顔で見ている。少女は多分推測が正しければスイスさんの容姿に萌を感じたのだろう。少女のどことなく嬉しそうな顔に同じにおいを感じた。
そのときアメリカさんが少女にコーラと薬を手渡した。何か持病でももっているのだろうか、とりあえず言えることはコーラでは薬は飲めません。結局彼女は水で飲んだようだ。
続いて現れたのはフランスさん。少女の表情がぱっと明るくなってフランスさんに駆け寄っていった。フランスさんも嬉しそうに寄ってきた彼女を抱き上げた。
少女は「降ろせ〜」と言って手足をジタバタとさせている。惜しい、もう少しでスカートの中が見えそうだったのに。
アメリカさんはそんな二人の様子を見て少し驚いている。
そのうちに中国とロシアさんとバルト三国の面々が会議室の扉を開いた。ロシアさんにみんな怯えているようだ、本当ロシア消えればいいのに。ただ私は空気を読むのでそのようなことは口には出しません。ポーランドさんも後ろから出てきた、多分ロシアさんの影で見えなかったのだと思う。
ここら辺の時間で登校ラッシュのようだ。ドイツさんがイタリア君の首の根っこを持って入ってきて、続いてオーストリアさんとハンガリーさんが仲睦まじげに来た。王道カプだね。ギリシャさんとスペインさんののんびりコンビも来た。一緒にロマーノさんもいる。
いつの間にかカナダさんもいて、あとはイギリスさんだけでメインメンバーは揃う。
刻々と時間が過ぎる。少女はアメリカさんの袖の端を握って引っ張っている。怯えているようだ。ああ一眼レフカメラ持ってくればよかった。
会議開始の二分前にイギリスさんが来た。酷く窶れていて、今にも死に神が鎌を振りかざしそうな様子だった。それを皆さんガン見。
「アーサー…!」
突如少女が再び駆け出してイギリスさんのもとへ向かう。えっ、何このドラマ的展開。イギリスさんは彼女を見た瞬間表情が一変して宝物を探し出した子供みたいだった。寄ってきた彼女を両膝を折り抱え込み抱きしめてキスをした。言っておくがここは会議室であるプライベートな場所ではない。少女はそれから逃げようとするがイギリスさんが彼女の頭をがっちり捕まえて離さない。しかもなんかいつの間にかディープなのしてますよイギリスさん。みんな顔が真っ赤です。あなたは紳士じゃないんですか、それではエセ紳士と呼ばれますよ。
「イっ……イギリス〜〜!!!!」
先陣を切ったのはアメリカさんで、大分怒っていらっしゃる様子で彼女を引き剥がして自分の後ろに隠して触れられないようにガード。少女は顔がとろんとしていて、もうやばいんですけどその表情。
「何だよっ!!てかお前かを浚ったやつは!ふざけんなよ、英領だぞ!てめーが口出すところじゃねーんだよ!!×××にするぞこの野郎!!」
ああ、大航海時代のが出てますよイギリスさん。そんなイギリスさんの様子を見て少女が震えだした、瞳にはたっぷりと涙がたまっている。
それを見てイギリスさんははっとした顔をして少女に近寄ろうとするが、アメリカさんがそれより先に彼女を抱きしめた。
「大丈夫、大丈夫だから落ち着いて。薬はさっき飲んだから暫くすれば効くはずだから」
あやすように背中をぽんぽんと軽く叩き、アメリカさんはキッっとイギリスさんを睨んだ。
「彼女はこれから独立をするんだ、手を出さないでくれ。今日の世界会議の議題もそれについてだ」
会議室は静寂だった。誰しも言葉を出さない、いや、出せる雰囲気ではない。いつもの会議とは違うシリアスな雰囲気で溢れていた。
どうなるのであろう、今日の会議。