「は?」
突然彼女が発したすっとんきょんな言葉を脳内で理解することが出来ない。
「だ・か・ら、てめぇパスタに毒持っただろう!! こんな貧しい者をいたぶる玩具にしやがって!! 死ねこの小悪党、成敗してやる!!」
いきなり怒り出し、大声で叫びながら何処に隠し持っていたのであろうサバイバルナイフを振りかざす。
あれ?え、待てよ、俺の家に盗みに入った小悪党はどこのどいつだよ、そう示唆したくなったがそんな状況ではない。と、いうよりこんな状況でも冷静な考え事が浮かべることが出来るのは幾多もの戦いの中で培った余裕からだろう。
振りかざされたそれの軌道からさっと身を反らし、ナイフを握る手の甲の付け根を平手の側面で軽く叩けば意図も簡単にそれは床へと転がった。そのままその腕を背に向けて捻って体を倒せば、あっという間には拘束された。
「なんだよ、放せよ外道!!」
「・・・俺はパスタに毒なんて持っていない。お前の何か勘違いだろう」
「なら一遍そのパスタと称する物を食べてみろよ!!」
彼女の体を左手で抑えたまま、右手でそれを口に運んでみた。
油のねっちょりとした感触が広がる。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ちょっと油が多すぎたかな・・・」
「いやつっこみどころそこだけじゃないでしょう!!」
勢いよく手の甲が鳩尾にクリーンヒット、ごふっと音がしてノックアウト。別に毒なんて何も入っていないし、倒れるまでのものでもないではないかと思うのだが。反射的に滲む涙がちょっぴりその気持ちを代弁していた。