一昨日ティファが大量に買い込んできたパスタが鍋の中でぐつぐつとお湯に浸る。一方彼女はというと相当腹の減っているのであろう、縄を解いても大人しくいい子にその場に正座している。二分おきに彼女の盛大な腹時計が鳴るのでパスタを茹でるのにわざわざタイマーをセットしなくてもすんだ。メニューはもう決めてある、たらこパスタにする。何故なら作り方がとても簡単でかつ美味しいからである。ということで冷蔵庫からたらこを取り出そうと見ると、たらこが一人分しかなかった。(いつも俺一人だから一人分しかいつも置いていないのだ!)選択肢@消滅。そう言っているうちにもパスタは茹でられていてタイムアタック。今の感情を表現するなら、石化ビームを受けながら敵と戦ってはいるが残り十秒たらずで石化してしまいそう、が、しかし敵を倒せそうな見込みがない。そんな感じだ。なにか冷蔵庫には無いのか、がちゃがちゃと探しているうちに彼女の三回目の腹時計が雄叫びを上げた。茹で上がるまで残り時間あと四分。
『勇者はケチャップとピーマンとベーコンを見つけた』(♪チャッチャラララー♪)
「・・・ナポリタン・・・出来る、俺なら出来る・・・」
パスタはたらこ以外作ったことの無い俺は、初めてナポリタンというものに挑戦してみることにした。何度かティファの作っているところを見たことがあるから大丈夫であろう。少し自分を信じてみることにした。そのとき丁度五回目の腹時計が鳴りパスタが茹で上がったようだ。
さぁ、いくぞ、頑張れ、俺。
*
「うわぁ〜美味しそう〜!!」
見よう見まねだがナポリタンというものを作ってみた。取りあえず前にティファの作ったものと似たような外面にはなった。目の前の少女、いや違った、目の前の女性は目をきらきらと宝石のように輝かせてそれに見入っていた。そのときの笑顔を見ていたら、料理を作る楽しさとはここにあるのかもな、と少し納得した。
「食べていいの?」
「あぁ、構わないぞ」
「いただきま〜す!!」
彼女は豪快にパスタを口に含んだ。