暫し向かい合っての沈黙が続く。少女は手を縛られたまま正座させられ、その目の前で仏頂面のクラウドがいるという図になっている。
少女の顔は青ざめていて、なんとも居心地の良い雰囲気ではまずないことが伺える。
そんな微妙なクラウドの部屋の空気にひきかえ、ベランダの外に映し出される青々とした空とその鼻をくすぐるような柔らかく温かく吹く風は正に穏やかで清々しい景色の象徴と言わんばかりのようなものに見える。小鳥まで飛んでいる。少女は恨めしそうに外を睨んだ。小鳥は彼女を嘲笑うように高らかに鳴く。
「どこを見ているだ」
明らかにドスのきいた声。クラウドの背後からは、黒い、まるでかの元英雄の発動させたメ○オのようなオーラが濃霧のように発生している。これが世界を救ったヒーローか、とつっこみたいところだが少女は目の前に座るその人がそのヒーローだと知るはずもない。
さながら刑事と犯人の取調室のようだがそっちの方が全然ましである。
「お前名前は?」
「マリア・ジョセフソンニーン三世」
「明らかな嘘をつくんじゃありません」
そのときみちみちとクラウドの拳を握る音が聞こえたような気がした。
「………… です」
「が名か?」
「……はい」
「俺の家で何をしていたんだ?」
その問いにきゅっと口を噤む。それを見たクラウドは、何も言わずただひたすらに見つめ合うことをしていた。そしてこぼれる。
「迷子に……
「なってないよな」
……はい」
仕方なく諦めて投げやりに口を開く。
「泥棒しにきました」
異様ににその言葉だけが部屋に響き宙に散った気がした。
それを聞き、ぎろりと睨もうと視線をやると、ふっと床に伏し影を落とすような悲しく寂しそうな顔をしていた。
それを見てしまい、急に自分の中の怒りの気持ちが風船が萎むように萎えていくのがわかった。
「そうでもしないと生き延びれないんだよ…」
ポツリと吐くように、ため息がこぼれるように言った。