「………」

そこには見たことも無い少女が丁度そこから侵入してきましたと言わんばかりにいた。しかも土足で。
少女はまだクラウドのことに気づいている様子は無い。
壁の陰からそっと見やると、彼女はダイニングに置いてあった棚を漁り始めた。
だがそこには読書用に買った本や、辞書などの勉強教材しかいれていない。いくら探しても金目のものは無いはずだ。
一歩足を進めて彼女に近づいてみても、自分のことに手一杯で気付く様子など微塵も感じられない。
あっという間に背後をとることが出来た。
職務質問をする警察官の如く、肩を二度ほど叩いてみた。ゆっくりと少女は変な汗をかきながらこちらへ振り向く。頬がの肉が痙攣しているようだ。

「・・・・・・あはっあははっ」

暫しの沈黙。見つめあう二人。

「しっ・・・失礼しましたあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

先攻をとったのは少女のほうだった。クラウドの手を跳ね除け、物凄い勢いでベランダの窓に突っ込もうとする。窓から飛び出るのは構わないが、ここはマンションの三階である。普通に考えて飛び降りて無事である筈が無い。

「あっ・・・待て」

クラウドがそう言ったころにはもう遅かった。少女はひらりとベランダの手摺りから宙を待った。慌てて追っかけてベランダに飛び出ると、手摺りの隅に一本のロープが結び付けられていた。少女はそれに捕まってするすると降りて行く。
逃がさん、と言わんばかりにそれを掴み思い切り上に手繰り寄せた。小柄な少女の体重などたかが知れている、いとも簡単に少女を再びベランダの中へと引き寄せた。
取りあえず抵抗しないように手繰り寄せたそのロープで手を縛り、部屋の中に案内をした。