運命的な出会いというラブロマンスの定番となったそれは、一般的に考えてえらく芝居臭く、なんとも餓鬼臭いものなのだろう。一概には言えないだろうが奇跡みたいな出会いがあり、そこから決められた見え透いた乗り越えられる障害物付きのレールを進みゴールするなんてまずありえないと思う。だいたい、直感で運命の相手だとわかって甘く切ない恋に落ちるなんて笑ってしまう。
手元にあったリモコンチャンネルでテレビの電源を切った。
黒く柔らかい一人で使うには大きすぎるソファーに身を沈め、手足を思い切りのばす。久々に宅配の仕事が休みで、普段観れないテレビをつけてみたら昼ドラやワイドショーばかりであった。ドラマなど特に観る機会がなかったので少し観てみようと好奇心が弾んだが、その膨らんだ期待の倍以上にそれは見事なハズレであった。彼女との出会いが一瞬にしてこれが運命だとわかった?なんだそのセリフは。実に下らない。
せっかくの休日を有意義に使いたいという願望がありつつも、慣れないことである故どう使っていいかがわからない。思わず一人で苦笑をしてしまった。

「暇な時間の使い方がわからない…」

ゆっくりと上を仰いでもそこにはただ天井があるだけで無意味なことであった。
ごろごろとその場でうだってみるものの、普段体を動かしてばかりいるせいか落ち着かない。暇なときに読んでいる本も、昨日の時点で読み終えてしまっていた。
こんな暇で平凡ともとれる時がくるなんて、今までの自分だった考えられないことだろう。
思えば色々なことがあった。多分波乱万丈と言う言葉が似合う人生だったかもしれない。それくらいの動乱の中に身をおいてきた。
上を仰いだまま目を瞑ると、ベランダから射す温かい日の温度を感じるような気がする。外からの微風がふわりと流れ入ってくる。
あれ、窓なんて開けてあったあったっけ?
嫌な予感がし、瞼を上げてベランダの窓のあるダイニングに体を起こし向かうことにした。